尿路感染と発熱

尿路感染は、感染症による発熱の原因では呼吸器感染についで多く、高齢者が多い在宅医療の現場でもポピュラーな原因です。ある統計では75才以上の感染性発熱の原因では、呼吸器感染症が約6割、尿路感染症が2割とのことです。

病院で泌尿器科専門医として働いていた頃、他科から「発熱は尿路感染が原因なので治療してほしい」という依頼を多く経験しました。特に長期に尿道カテーテルが留置されている方は要注意です。尿所見は、カテーテルが留置されているのでほぼ100%「細菌尿」となります。発熱が続けば尿路感染による熱発を疑うのは当然でしょう。しかし、泌尿器科医はもう少し色々と考えます。

尿路に関連する発熱は、腎盂・腎実質の炎症、前立腺の炎症、精巣上体の炎症、精巣の炎症などが原因となります。膀胱炎のみで発熱することは殆どありません。先述したようにカテーテルが留置されていると当然細菌尿となります。ですので、尿所見のみで「尿路感染による発熱」と決めつけるのは大変危険です。実際に、急性虫垂炎や大腸憩室炎、腹部大動脈瘤など緊急性を伴う疾患が隠れていたことも多く経験しています。特に高齢者では自覚症状や理学的所見に乏しく慎重な診断が必要です。

在宅の現場では、できる検査も限られます。患者さんやご家族の話をよく聞き、触診や聴診を丁寧に行うことが重要です。私達は「たかが発熱」ではなく、そのような姿勢で診察を行っているのです。

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