認知症介護について思うこと 訪問診療の立場から

在宅で介護されている認知症の患者さんは、精神状態が安定している人が多いです。不安や不穏状態に対する薬を使用することも少なく、使用している場合もその量は少ないのが実際です。身体的なケアもとても行き届いております。家族の一員としての立場で、本人のことを第一に考える家族にかこまれているからでしょう。

ですが、これは並大抵の努力ではなし得ません。認知症の介護には、介護力と時間が必要とされ、その程度はかなり高度になるからです。

認知症の在宅介護は、医師の立場からみると、家族の多大な自己犠牲の上になりたっているように思えます。その生活を、ある程度の折り合いをつけながら淡々とこなしている人、苦痛にみちてあきらめの境地で過ごしている人、様々です。

これを創造力をもって楽しくこなしていく方法があるのでしょうか?

話は少し変わりますが、デンマークは社会保障の充実した国であり、認知症ケアの先進国のひとつとして知られていますデンマークの認知症コーディネーターとは、認知症ケアのスペシャリストであり、認知症介護教育、家族や介護職員を対象とする認知症介護のスーパービジョン、ケアマネジメントを担う人材で、同国ではこうした人材が豊富です。この認知症コーディネーター研修を受講するには、豊富な実戦経験を持つ看護師、あるいは社会保険介護士の資格者であることが必要となります。

「認知症対策国家プロジェクト 新オレンジプラン」に基づいて2017年9月1日から横浜市も 旭区と西区に 認知症初期集中支援チームが立ち上がりました。1チームの年間対応患者数は100名を目標としているようです。こうした人材が少なかった日本において、こうした試みはすばらしい、と感じます。日本版認知症コーディネーターを国家資格として、認知症ケアを新しい社会へのチャレンジとしてとらえてられる人材を育成してほしいものです。こうした試みを続けていくことこそ、社会で困っている方々の本当の助けとなるに違いないのですから。

PAGE TOP